可能性ではなく確率へ注意を払え。或いはもっとマシな方法を考えよう(About Face)
ユーザーの集中を邪魔しない
文書やソースコードを書いているとき、気がつくと時間を忘れて没頭したりそのプロセスを楽しんでいることがある。こうした状態のことを流れ(flow)と呼ぶらしい。確かに「フロー状態」とググってみると概ねそのようなことが書かれたコンテンツがヒットする。
こうしたユーザーのフロー状態を維持する方法の一つとして「モードレスでフィードバックする」というものがある。
こういったウィンドウやダイアログボックスを差し込む方法はモーダルである。ユーザーは自分のタスクを続ける前にまずこのモードに対処しなければならない。当然ユーザーのフロー状態を止めてしまう要因に繋がる。
確率と可能性
しかしこうしたモーダルやダイアログボックスは頻繁に見かける。はてなブログでも下書きを削除しようとするとこのようなポップアップが出てくる。
削除のように不可逆的な操作についてはミスをした時のダメージが大きい。こうした注意喚起の意味も込めて何も考えずに確認モーダルを挟むことが多いし、それによって顰蹙を買うことも少ない。むしろ一部のユーザーにはこうしたダイアログが無いことが不安だと文句を言うくらいだ。
しかし今からまさに下書きを削除しようとしているユーザーがここで「キャンセル」を押す可能性はどの程度あるのだろうか。あるとすれば、チェックミスで別の記事を消してしまうということが考えられなくもないが、このダイアログでは「1記事を削除します」と記事の数しか明示してくれていないため、そのミスも防ぐことはできない。
これは完全に私見だが、現場猫的なダブルチェックによるトラブル回避をバカにするソフトウェアエンジニアでも、意外とこういったダイアログを何も考えずに差し込んでくることが多い。
話を戻すと、可能性がゼロではないからといってダイアログを差し込むのは止めようということだ。一体その操作が行われる確率はどの程度なのか、ということを考えなければならない。多くのユーザーにとってはただ手間でしか無い操作を、一部のユーザーのために強いることは全く合理的でない。
ミスをした一部のユーザーを救いたいのであれば、彼らだけにピンポイントで有効なソリューションを考えるべきである。
具体例
例えばGmailでは送信したメールを、その直後であればキャンセルすることができる。
【Gmail】送信したメールを取り消す方法(PC、Android対応)- 送信取消機能 ≫ 使い方・方法まとめサイト - usedoor
この方法は多くのユースケースに於いて、ダイアログを差し込むことより遥かに効果的ではないだろうか。別にやり直す必要の無いユーザーは完全に無視することができるし、うっかりミスを犯した場合でもワンクリックで元に戻すことが出来る。
そしてはてなブログの下書き削除についても、結局ゴミ箱機能がついており30日以内であれば復元することができる仕様になっている。せっかくこの機能があるのだからわざわざ確認ダイアログなど挟まずに、Gmailと同じように「ゴミ箱から復元」リンクでも用意すれば良いのだ。
とはいえ、流石に天下のはてな社がこんなことに気づかぬはずがない。下書きを削除するという操作自体めったに行われないから放置しているのであろう、と思っている。